カメラやレンズについて気ままに書く「カメラよろず話」第41回。今回は、日本光学工業が1977年に発売した広角単焦点レンズ、Ai Nikkor 35mm F2について紹介したいと思います。

開放F値が1.4から2.8まで揃ったNikkorの35mm3兄弟、その次男であるレンズについて、使用感や実写を紹介したいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
なお、過去のカメラよろず話については、以下のカテゴリーから参照いただければと思います。
- Ai Nikkor 35mm F2仕様
- Ai Nikkor 35mm F2を入手した経緯
- Ai Nikkor 35mm F2を使った感想
- フィルムでの作例
- デジタルでの作例
- レンズ構成(と一眼レフ用広角レンズの歴史について)
- 終わりに~扱いやすく、癖もない広角レンズ~
- お知らせ
Ai Nikkor 35mm F2仕様
焦点距離:35mm
最大口径比/最小口径比:F2/F22
レンズ構成:6群8枚
最短撮影距離:0.3m
マウント規格:ニコンFマウント
絞り羽根:7枚
フィルター径:52mm
質量:280g
発売年:1977(昭和52)年
このAi Nikkor 35mm F2は、1965(昭和40)年に登場したNikkor Auto 35mm F2から光学系の基本構成を変えないまま、マルチコート化、Ai対応と世代を重ねて発展してきた35mm F2の系譜に属するレンズです。
ニッコール千夜一夜物語には、この進化系であるAi-S版の解説記事がありますが、光学系はAi版から変わっていません。nij.nikon.com
なお、冒頭にも書いたように、ニコンFマウントの35mmレンズには、このF2のほかにF1.4の大口径レンズと、明るさを控えめにしてコンパクトなサイズとなったF2.8が存在します。
同じ単焦点レンズでも50mmレンズとかだとだいたいどこのメーカーでもF1.4とF1.8があるように、同じ焦点距離で価格に差をつけたラインナップを揃えるのは珍しい話ではありません。
ただ、Nikkorのように35mmで3種類も発売されていたというのは中々すごいことだと思うのですよね。
当時のユーザー側もどれを買うか悩んだんじゃなかろうかと思いますが、どうだったんでしょうか。
Ai Nikkor 35mm F2を入手した経緯
このレンズを買おうと思ったきっかけが、Nikon F3の購入でした。
F3を購入した秋葉原の2nd baseさんで「このカメラに合わせるレンズを何にしよう……」と考え
「50mmならAI AF Nikkor 50mm F1.8Dをすでに持っているしな……それより、今まで買ったことのない画角の単焦点レンズを試してみるのもアリだな……」
ということで店内を探すことしばし、お手頃な価格で見つかったのが、このAi Nikkor 35mm F2。税込16,500円。
カニ爪が無いのがちょっと気にはなったのですが、私の所持するボディでは特段困ることが無いのでそのまま購入しました。
ちなみに、F3の相方としては定番のAi Nikkor 50mm F1.4Sなんかを買うのも考えていました。ただ、先ほど述べたように50mmのレンズをもう所有していたこと、最近の相場がなんか高く感じた(3万円くらい)こと、旅行に持っていって景色を記録するような用途では50mmだと少し狭いと感じていたこと、といった理由から、悩みはしたものの最終的にはAi Nikkor 35mm F2を購入するに至りました。
Ai Nikkor 35mm F2を使った感想
コンパクトなサイズがGood
F2クラスということでF2.8クラスのレンズと比較するとやや大きいものの、それでもサイズ・300gを切る重さはかなり扱いやすい部類に入ります。
同じ35mmでもこれがF1.4になると、約400gと少し重くなってしまいますしね。
個人的には、フィルムカメラで使う分には被写界深度のことだけ考えればF2.8でも十分、ファインダーの明るさという面でも、F2で暗いと思うことはあまりないです。
そういうわけで、F2の明るさとサイズは私にとってとてもいいバランスであると考えています。
35mmという画角、その使いやすさと難しさ
さきほど「今まで買ったことのない画角の単焦点レンズ」といいましたが、実は以前このブログでも紹介したミノルタのAF-S QUARTZが35mmのレンズを搭載しています。
このカメラは最後に使ってからそこそこ経つのですが、「割と使いやすい画角だなあ」とも感じていたのを覚えています。


そういうわけで、35mmはある程度慣れた画角。街撮りならかなり使いやすい画角で、苦手意識はありません。
……とはいえ、広角レンズは何も考えずに撮ると画面が整理されていない、よく分からない写真になってしまうんですよね。これは、私が28mmの単焦点レンズを2本所持していながら使いこなせず苦しんだ理由でもあります。
標準レンズといわれる50mmよりは広角寄りな35mm。広角レンズで直面する難しさと同様に、引き算を強く意識する必要は少しあるかな、と思います。
フィルムでの作例
さて、先に違うカメラの作例を出してしまいましたが、ここでようやくこのAi Nikkor 35mm F2の作例です。ここでは発売年的に同世代でもあるNikon F3との組み合わせで使用した作例を。

前回の旅行記で出したこの写真も、Ai Nikkor 35mm F2での撮影でした。小さな運河を挟んでの撮影ですが、私が好んで使う50mmだとちょっと窮屈になったであろう構図です。やはり35mmというのは街撮りに向いた画角だなと感じます。

デジタルだったら端っこをトリミングしたであろう写真です。当たり前にも思われるかもしれませんが、絞ればきちんとそれだけの写りを見せてくれるレンズです。
「絞っで撮った作例ばかり、何が面白いんださっさと開放を見せろ」という声が聞こえた気がしたので(笑)、絞り開放の作例も。

開放F値が2を切るようなレンズではないので、このくらいだなあという感じのボケ量ですよね。周辺の流れ方はさすがに現代レンズと比較すると劣る感じがしますが、ひどいものではありません。

なんとなくですが、背景は大きくボカしておきたいタイプのレンズな気がします。
デジタルでの作例
こちらはマウントアダプターを使用し、Z6IIIの組み合わせで撮影した作例です。ピクチャーコントロールはNLでRAWをそのまま現像しています。

最短撮影距離近辺、絞り開放での撮影です。画面左側の葉の後ボケには、やや非点収差が見て取れます。

開放で。二線ボケの傾向も見て取れますが、個人的にはそこまで気になりません。

引き続いて絞り開放、こちらは撮影距離をやや延ばした一枚です。ここでもちょっとグルグルしているような……(画面左側の壁)
ここからは、絞っていった際の描写の変化を見ます。まずは、近距離から。

曇り気味なのもありますが、うっすらとベールのかかったような描写。


これくらいまで絞ればハッキリとした絵になってきます。

お次は遠景です。1段ずつ絞っていって、描写の変化を見ます。細部が気になる方は拡大してみてください。

まずは絞り開放から。青空を撮ると、さすがに周辺減光が目立ちますね。




これ以上絞っていっても……なので、これくらいで。
「ブログのサムネ程度のサイズ」「端に目を向けない」という条件なら開放から結構イケる感じがしますし、1段絞ればもうほとんどこれでもいいかなあくらいな印象を受けます。
ちなみにISOが200なのは、この作例を撮った前の日にその設定で使用してから変え忘れていたためです(

最後に、逆光での作例を。画面の一部に木の葉に透かした太陽を入れていますが、かなり頑張っていると思います。
なお、このレンズの購入を考えている方は、詳しい描写についてこちらの動画がかなり参考になると思います。私の作例では伝わりきらないレンズの特性もよく分かる動画になっています。
たとえば周辺減光は上の作例だとあまり気にならないレベルですが、この動画で見るとさすがにちょっと目立つかも? と思いますね。
レンズ構成(と一眼レフ用広角レンズの歴史について)
レンズ構成図をニッコール千夜一夜物語の「AI Nikkor 35mm F2S」の回から引用します。

6群8枚、第3レンズと第4レンズの厚さが目を引く構成です。
先ほども触れましたが、このレンズ構成は、1965年発売のNIKKOR-O Auto 35mm F2から引き継がれてきたもの。そして、「凸凹凸凸」のレンズ後群の構成は遡って1960年発売のNIKKOR-H Auto 2.8cm F3.5で編み出されたものだそうです。この構成、収差の改善に効果が絶大だったらしく、その後の広角ニッコールレンズに採用されまくっています。

ちなみに、そんな2.8cm F3.5に見られる逆望遠タイプの元祖は有名はアンジェニューのレトロフォーカス35mm F2.5であり……と歴史が遡れるわけです。面白いですよね。フランスのピエール・アンジェニューが設計し1950年に発売したレンズは、バックフォーカスを長く取らなければいけないという制約のために開発が難しかった一眼レフ用広角レンズの世界に革命をもたらしました。
その素晴らしさは、旭光学のAuto TAKUMAR 35mm F2.3やKonica Hexanon AR 35mm f2.8といったアンジェニュー 35mm F2.5とほぼ同じレンズ構成をしているレンズが数多あることからも明白なものと言えるでしょう。
私はこれまで広角レンズにあまり手を出してこなかったのですが、光学史に名を輝かすアンジェニューに敬意を表してそのあたりのレンズも使ってみたいものです。
本家のアンジェニューを買うお金はないですが……(笑)
終わりに~扱いやすく、癖もない広角レンズ~

というわけで、Ai Nikkor 35mm F2の紹介でした。
基本性能の高さと、設計の古さからくる多少の甘さを備えたレンズです。
古いレンズの描写の甘さをエモに変えてアピールするのではなく、古いレンズなりの性能を引き出してきっちり写したいタイプの人におすすめのレンズかな、と思います。
つまり、結構私好みですね。
さて、今後の更新予定ですが、まず次回はAi Nikkor 50mm F1.4です。今回紹介した35mmを購入してしばらくしてから手に入れた標準レンズ、このブログで紹介したレンズの中で、一番ポピュラーなオールドレンズな気がします。いや、本当はAi-Sにしたかったんですけどね、予算の都合で……そのあたりの話も記事に書けたらな、と思いますが。
そしてその次は中判カメラの名機、Pentax 6×7の予定です。
晩冬にとある人から譲り受け、春先に修理に預けて以来、5月に修理から戻ってきたものまだほとんど使えていないカメラになります。
どちらの機材も出せる作例の数をもう少し貯めてから9月くらいには更新予定ですので、お待ちいただければと思います。
それではまた次回の更新で。
以下、お知らせを挟んでいつものアフィリエイトコーナーです。
お知らせ
①コミックマーケット108へサークル参加します
コミックマーケット108 1日目東1ホール サ08b「二枚爪」でサークル参加します。新
刊はいつもの感じのユウカ本です。ただし冬コミの続きではありません……正直間に合うかギリギリですが、完成したらこのブログおよびXにて告知いたします。
②合同誌に寄稿しました
るびび氏主催の合同誌、『Aiming fo(u)r You -ブルアカ女女合同4-』に小説を寄稿しました。漫画と小説で構成された合同誌で、(私以外の)参加メンバーはとても豪華です。そんな中で初めて書いたシグノドを提出した私は恐れ多くてガクブルしています。
1日目東カ45a「塩キャベツ亭」にて頒布されるので、是非お求めください。
【告知】
— るびび/C108土曜カ45a (@karuby77) August 5, 2026
C108(土曜)・東カ45a「塩キャベツ亭」にて
「Aiming fo(u)r You -ブルアカ女女合同4-」頒布予定!
会場価格は2000円予定!
おもて表紙は日景色(@shiki_hcg)先生に描いてもらいました、やった~! 目次情報も公開!
↓参加者・通販情報はツリー参照です↓ pic.twitter.com/Hhko5ud97B
というわけで、ここからはアフィリエイトコーナーです。
▽作例で使用したフィルムです。2026年8月1日現在、5,478円。昔よりは高いですが、きっと来年よりは安いです。
▽作例で使用したフィルムその2。こちらはAmazonで見つからなかったので、かわうそさんのリンク(非アフィリエイト)を貼ります。ハイライトがあまり粘らない特性がある(気がします)。

