こおろぎ観察日記

撮ったり書いたり旅したり、趣味についてのブログです。最近はカメラについて。

美しい景色は美しく。そうでない景色もそれなりに。FUJICA ST801について:カメラよろず話 第13回

使っているカメラやレンズについて自由に書くカメラよろず話。第13回となる今回とりあげるのは、富士フイルムが1972年に発売した35mm判の一眼レフカメラFUJICA ST801です。

FUJICA ST801&EBC FUJINON 55mm F1.8

どちらかというとレンズ固定式のコンパクトカメラの方が有名な気がする富士フイルムの35mmフィルムカメラですが、実はレンズ交換式のシステムがM42マウントとAXマウントの2種類存在します。

今回紹介するST801は、M42マウントのシステムにおいて、最高速1/2000秒のシャッタースピード世界初のファインダー内LED式露出表示を採用した意欲的な機種となっています。

作例も交えて紹介しますので、ぜひご覧ください。

なお、過去のカメラよろず話については、以下のカテゴリーから参照いただければと思います。

mushikago.hateblo.jp

FUJICA ST801の仕様

EBC FUJINON・SW 28mm F3.5との組み合わせ。

ややマイナーな機種なので、かんたんにスペックを記載しておきます。

シャッタースピード:B・1~1/2000秒
露出計:SPD受光素子、ファインダー内LED表示付き
フォーマット:135フィルム
レンズマウントM42マウント(ただしFUJINONレンズ開放測光対応)
フォーカス:MF
重量:635g
巻き上げ:手動
発売年:1972(昭和47)年

特徴としては、M42マウントでありながら一部に独自の機構を取り入れ開放測光に対応したこと、当時の機種としては高速な1/2000秒のシャッタースピードに対応したこと、LED式の露出表示を採用したことなどが挙げられます。

しかしまあ、機械式の布幕横走りで1/2000秒ってすごいですよね。

FUJICAのM42マウントのカメラボディで1/2000秒まで切れるのは、実はST801が最初で最後です。後継機で最上位モデルST901でも実現できていません。どれだけがんばったんだ、という印象を受けますよね。

ただ、1/2000秒を実現するためにがんばった代償なのか、高速シャッターを切った際にシャッターが跳ね返って、コマの右端が明るくなってしまうことがあるようです。
あと、ネットでよく見かけるのは、スプールの爪が折れて使えなくなるパターン。全部折れてしまうと、フィルムを装填できなくなります。

lein-ko.com

また、PENTAXと比べると同じM42マウントでも出物が少ないです。
状態のいい個体の数はさらに少なくなります(私が手に入れた個体は運よくファインダー内のチリ以外はほぼ完璧なコンディションでした)。

FUJINONレンズは結構使い勝手がいいので、セットで運用するべきFUJICAのボディで一番おすすめなST801が入手しづらいというのは残念ですよね。

FUJICA ST801を買うまで

OM-5との組み合わせでFUIJINON 55mm F1.6を使用していて、このレンズをフィルムカメラのボディで、そしてその良さを最大限生かすためにも開放測光で使ってあげたいなと思ったのが第一のきっかけです。

そうなるとM42マウントでFUJICAのボディを探すことになるわけですが、開放測光が使えるという時点で以下の機種に絞られます。
発売年とシャッタースピードの上限を書いています。

ST801(1972年・1/2000秒
ST901(1974年・1/1000秒)
ST705(1977年・1/1500秒)
ST705W(1978年発売・1/1500秒)
ST605II(1979年発売・1/700秒)

※ST705Wは、無印にモータードライブが使えるようにした機種

これだけ見ると、もうST801しか候補に残りませんよね(笑)

そういうわけでST801を探し始めたわけですが、中古カメラ屋を巡れど巡れど、出物がありません。

FUJICAでもST701(絞り込み測光の)やST605IIあたりは見かけますがジャンク扱いなことが多く、状態のいいものは見かけません。

それでも諦めきれずヤフオクに張り付いていたある日、いい感じの出物を発見。

レンズEBC FUJINON 55mm F1.8とのセットでした。
コメントや写真を見る限り、ボディはもちろん、レンズの状態もよさそうです。

これなら、と思い入札。ほかにも入札してきた人はいましたが、数回の入札合戦の末、15,000円少々で落札しました。
レンズ込みでこれは安かった!

そうして、私としては初めてのフィルム一眼レフを手にすることになったのです。

FUJICA ST801を使った感想

前提ですが、私が現時点で所有して使ったことのある一眼レフカメラは、このFUJICA ST801とNikon F-801、PENTACON SUPER TL 1000の3台しかありません。
あとはPentax SPをカメラ屋のジャンク箱で触ったくらいです。
そのため、他の一眼レフとの比較はあまりできませんのでご容赦ください。

①シャッターフィールがめちゃくちゃ好き!

これは、初めてシャッターを切った時から今に至るまでずっと感じています。
レリーズすると、心地よい感触の後に「パコッ」というちょっと間の抜けた音がするのですが、それもまた愛おしいです。
本当に好き。これだけで元が取れます(笑)

②見た目が好き

これはこれでカッコいいと思うんですよね。

はじめは軍艦部分が間延びしたような印象があって好きになり切れなかったのですが
使っているうちに慣れてめちゃくちゃ好きになりました。

個人的に好きなカッコ良さで言えばNikonのF3の方が上かもしれないんですが、いまとなってはST801の見た目がとても気に入っています。

③露出計以外に電池使わないカメラなのに便利

やはり開放測光は偉大、それに尽きます。

このボディでFUJINONレンズを開放測光で使った後にPancolarを絞り込み測光で使うと分かりますが、開放測光は本当に偉大。

じゃあ開放測光に対応してるほかの一眼レフでもいいじゃんって話なんですが、
それはそれ、これはこれ。

このカメラのいいところは、他メーカーのM42マウントレンズも絞り込み測光ながら使えることです。

なお、絞り込み測光のレンズで露出計を使うにはレンズマウント右側のボタンを押し込んだままファインダーをのぞきこむ必要があるのですが、このボタンは押し込んだままの状態で固定することができます。

丸いのが絞り込みボタン、左側はセルフタイマーです。

また、シャッターにもロック機構があります。押しながら右側に回して、赤い●にあわせるとシャッターがロックされ、持ち運びしているときに誤ってカシャッ……みたいなことが起きません。

写真の状態だとシャッターが切れるようになっています。

ST801の使い方はネットにそれなりの数が上がっているのですが、
シャッターロック機構や絞り込み測光ボタンのロック機構、そのどちらにも正しく言及した記事は少ないです。

どちらも、ユーザーの使い勝手に配慮した非常に優れた機構だと感じています。
いやまあシャッターロック機構くらいほかのカメラにもあるんでしょうけど。

(2025.4.23追記)マニュアルを掲載しているサイトを見つけました。さすがにマニュアルにはばっちり書いてありますね。

butkus.org

④割と手ごろに持ち運べる

そりゃレンジファインダーのHi-Matic Fなんかと比べると重たいですが、いい感じの重さです。つけるレンズもレンズ枚数一桁のMFレンズばかりなので、トータル重量が軽い!(笑)

先に挙げたマニュアルいわく、ボディ単体で635g、1.8/55のレンズ付きでも830gです。

私のカメラ歴がm4/3からスタートしたせいでもあると思うんですが、フルサイズのデジタルカメラはミラーレスでも重いんですよ……それに比べるとST801は本当に軽くてうれしい。

⑤ロマンと特別感

FUJICAでは初となるM42マウントでの開放測光を実現した機種であり、また1/2000秒という驚異のシャッタースピードを実現した機種でもあります。実用性とロマンが両立したいい機種です。

また、冒頭でも触れたようにFUJICAの35mmフィルム用カメラというとコンパクトカメラの方が有名で、一眼レフはマイナーな部類に入ります。

まあ珍品というレベルではないんですが、オタクが好みがちな「人と違う私」的な特別感を味わうにもいいボディです(笑)

⑥困るっちゃ困るところ

ファインダーの左側に見えるのが電池蓋。ここを開けて、4LR44を入れます。

電池の話。この時代のカメラあるあるですが、露出計を動かすのに必要な電池4LR44は現在国内生産されておりません。コンビニなんかには売っていないので、入手には少し手間が要ります。私はAmazonで中国製の5本パックを買いました。

まあ最悪電池無くてもシャッターは切れるしフィルムは巻き上げられるし露出計はスマホのアプリでもなんとかなっちゃうんですが。

後はまあ壊れたらどうしよう、というのはありますね。

Nikonのように、メーカーがフィルムカメラを修理するキャンペーンをしてくれることもないですし……
まあ露出計以外は電気を使うところもないので、修理業者に出せば何とかなるとは思いたいですが。

作例

描写を決めるのはレンズとフィルムであり、フォーマットもスタンダードな35mm判なのでボディ単位で作例を見ても仕方ない所ではありますが、まあせっかくなのでいろいろとご紹介します。いずれもEBC FUJINON 55mm F1.8との組み合わせです。

日中に絞り開放で撮るには1/2000秒が必要ですね。F1.8 1/2000 PORTRA 160

先ほども書いたとおり、気軽に持ち運べるサイズ・重さなので旅行にも持っていっています。以下の2枚は2025年1月の東北旅行で撮影したものです。

列車の窓越しに撮った太平洋。 水平取れてないのはご愛敬。F2.8 1/250 Ektar100

千畳敷海岸にて。上辺のモヤモヤは自家スキャンしたときのミスです。F5.6 1/500 Ektar100

荷物が多くて重い物を持っていくのに躊躇する同人誌即売会にも、このカメラなら持って行けます。

何となく好きな一枚。F4 1/125 フジ SUPERIA X-TRA 400

おわりに~富士フイルムの本気が垣間見える隠れた名機~

撮り鉄だって出来ちゃいます。F5.6 1/500 lomography color negative 100

入手性や持病などに難のある機種ではありますが、私にとっては大切で大好きな一台で、この記事を書いている現在所有するフィルムカメラ6台の中で一番使い倒しています。

最高速1/2000秒のシャッターや、ファインダー内LED露出表示など、随所に富士フイルムの本気と技術力が垣間見えるこのボディには、優秀なFUJINONレンズはもちろん、他メーカーのM42マウントレンズも(絞り込み測光にはなりますが)組み合わせることができます。
M42マウントのレンズをいろいろと楽しみたい方にはお勧めしたい一台ですね。

え、ふつうは初めてのオールドレンズとしてSuper-Takumar 55mm F1.8を買った延長でボディもPENTAX SPなんかを使うって?
……それはそうですね(完)

 

次回の更新では、ST801とセットで入手したEBC FUJINON 55mm F1.8を取りあげます。

割とお安く手に入るM42マウントの標準レンズですが、フィルムメーカの出すレンズとあって実力は決して侮れません。その描写力やいかに。

というわけで、次回の更新をお待ちください。ではでは。

以下、ST801を使う方に向けたアフィリエイトコーナー。

▽ST801の電池はこれを使っています。LR44にアダプターを付けてもいいのですが、アダプターも買うと高いので……